「日本に銀行口座があるけど、アメリカで報告が必要なの?」「FBARって何?聞いたことがない…」
在米日本人の方からよく聞かれる質問です。FBARはTax Returnとは別の報告制度で、対象となる方が提出を怠るとCivil Penaltyや、重大なケースではCriminal Penaltyの対象となる可能性があります。この記事では、FBARの基本ルールを日本語でわかりやすく解説します。
FBARとは?
FBAR(エフバー)とは、Report of Foreign Bank and Financial Accountsの略称です。
正式な様式はFinCEN Form 114で、外国の金融口座について米国財務省のFinancial Crimes Enforcement Network(FinCEN)へ報告する制度です。
Form 1040などのTax Returnを提出していても、FBARの提出義務がある場合はFinCEN Form 114を別途提出する必要があります。
誰がFBARを提出する必要があるか
原則として、次の2つの条件を両方満たすU.S. personにはFBARの提出義務があります。
- 外国にあるFinancial AccountについてFinancial Interest(金融上の利害関係)またはSignature Authority(署名権限等)を持っている
- 報告対象となるすべての外国金融口座のaggregate maximum value(年間最高残高の合計)がCalendar Year中のいずれかの時点で$10,000を超えた
U.S. personには、米国市民、米国Resident、米国内で設立・組成された一定のCorporation、Partnership、LLC、Trust、Estateなどが含まれます。
外国金融口座すべてのMaximum Valueを合計して判定します。
例えば日本に3つの口座があり、それぞれの年間最高残高が$4,000・$3,000・$4,000であれば、Aggregate Maximum Valueは$11,000となるため、原則としてFBARの提出が必要です。
各口座についてCalendar Year中のMaximum Valueをまず現地通貨で確認し、その金額を原則としてその年の最終日のTreasury exchange rateを使って米ドルへ換算します。
対象となる口座の種類
FBARの対象になり得る外国金融口座には、例えば次のようなものがあります。
- 日本の銀行の普通預金・定期預金など
- 日本の証券口座
- Foreign Mutual Fundなどを保有する外国金融口座
- Cash Valueのある一定の外国Life InsuranceやAnnuity
- 外国金融口座に対するSignature Authorityがある口座
日本側で非課税や年金扱いであっても、米国側のFBAR・Form 8938・所得税上の扱いが同じとは限りません。
FBARの提出期限
📅 原則:翌年4月15日
4月15日までに提出しなかった場合でも、FBARには原則として10月15日までの自動延長があり、Extension Requestを別途提出する必要はありません。
FBARはCalendar Year(1月1日〜12月31日)単位で判定します。
FBARの提出方法
FBARはFederal Income Tax Returnには添付せず、FinCENのBSA E-Filing Systemを通じて電子提出します。
✅ FinCEN Form 114をオンラインで電子提出
✅ 個人本人が提出する場合、通常は無料
✅ Paper Filingは原則ではなく、特別な承認が必要になる場合があります
口座情報は何年間保管する?
FBAR対象口座については、原則としてFBARのDue Dateから5年間、口座名義、口座番号、金融機関名・所在地、口座の種類、年間Maximum Valueなどの記録を保管します。
FBARを提出しなかった場合のペナルティ
FBAR違反にはCivil Penaltyが課される可能性があり、故意性やReasonable Causeの有無など、具体的なFacts and Circumstancesによって扱いが大きく変わります。
故意でない違反(Non-Willful)
Non-Willful violationには法定のCivil Penalty上限があります。この上限額は毎年Inflation Adjustment(インフレ調整)されるため、古い資料に記載されている「$10,000」を現在の固定額として使うのは正確ではありません。
また、一定のReasonable Causeが認められ、法律上の要件を満たす場合にはPenaltyが適用されないことがあります。
米国最高裁はNon-Willful FBAR violationについて、必要なFBARを提出しなかった場合の違反は、原則として未報告口座1つごとではなくReport単位で扱うと判断しました。つまり、複数口座を1つのFBARで報告すべきだったケースについて、単純に口座数×Penaltyとする考え方ではありません。
故意による違反(Willful)
Willful violationの場合、Civil Penaltyの法定上限は、原則として次のいずれか大きい金額です。
- 法令上の固定額(毎年Inflation Adjustmentあり)
- Violation時点の対象口座残高の50%
Willful violationは非常に重大で、状況によってはCriminal Penaltyの対象になる可能性もあります。
FBARとFATCA(Form 8938)の違い
FBARと混同されやすいのがForm 8938(Statement of Specified Foreign Financial Assets)です。これはFATCAに関連するIRSのInformation Reportingです。
| FBAR | Form 8938 | |
|---|---|---|
| 提出先 | FinCEN | IRS |
| 提出方法 | BSA E-Filing Systemから別途提出 | 原則としてFederal Income Tax Returnに添付 |
| 基本的なThreshold | 外国金融口座のAggregate Maximum ValueがCalendar Year中に$10,000超 | Filing Status・米国内居住/海外居住によって異なる |
| 対象 | 主に外国金融口座 | Specified Foreign Financial Assets |
Form 8938の主なReporting Threshold(個人)
米国内に居住している場合
- Unmarried / Married Filing Separately:年末$50,000超 または 年中$75,000超
- Married Filing Jointly:年末$100,000超 または 年中$150,000超
IRSの「海外居住者」の要件を満たす場合
- Joint Return以外:年末$200,000超 または 年中$300,000超
- Married Filing Jointly:年末$400,000超 または 年中$600,000超
両方必要になるケースもありますが、FBARだけ必要なケース、Form 8938だけ必要なケースもあります。対象資産とThresholdが異なるため、「どちらかを出せばもう一方は不要」という関係ではありません。
申告漏れに気づいた場合
過去にFBARを提出していなかった場合、状況に応じて複数の対応方法があります。どの方法が適切かは、海外口座からのIncomeを正しくTax Returnに報告していたか、Information Returnにも漏れがあるか、Non-Willfulかどうかなどによって異なります。
Streamlined Filing Compliance Procedures
一定の要件を満たすNon-Willful taxpayer向けに、IRSはStreamlined Filing Compliance Proceduresを設けています。
Streamlined Domestic Offshore Procedures
米国内居住者向けの手続きでは、原則として:
- 直近3年のCovered Tax Return Periodについて必要なAmended ReturnおよびInformation Returnを提出
- 直近6年のCovered FBAR Periodについて必要なDelinquent FBARを提出
- 追加TaxおよびInterestを支払う
- 対象となるForeign Financial Accounts / Assetsについて計算した5% Miscellaneous Offshore Penaltyを支払う
この5%は「未払い税額の5%」ではありません。対象となる6年間のFBAR期間・3年間のTax Return期間についてPenalty Baseに含まれるForeign Financial Accounts / Assetsを特定し、各年末残高・Valueを集計して、その中のHighest Aggregate Balance / Valueの5%として計算します。
Streamlined Foreign Offshore Procedures
IRSの要件を満たす米国外居住者については、原則として直近3年のTax Returnと直近6年のFBARを適切に提出し、追加TaxとInterestを支払います。適格なケースでは5% Miscellaneous Offshore Penaltyは課されません。
Delinquent FBAR Submission Procedures
Tax Return上で外国口座からのIncomeをすべて適切に報告し、Taxも納付済みで、FBARだけを提出していなかった場合などには、Streamlined Proceduresとは別のDelinquent FBAR Submission Proceduresが適用できる可能性があります。具体的な要件を確認したうえで判断します。
よくある質問
Q. 日本に帰省した時だけ使う口座でも報告対象ですか?
口座の使用目的だけでFBAR対象外になるわけではありません。外国金融口座のAggregate Maximum Valueが年間のいずれかの時点で$10,000を超えたかどうかなど、通常のFBARルールで判定します。
Q. 年末残高がゼロならFBARは不要ですか?
必ずしもそうではありません。FBARは年末残高だけではなくCalendar Year中のMaximum Valueを基準に判定します。年の途中で残高があり、その年中の外国金融口座のAggregate Maximum Valueが$10,000を超えた場合、年末残高がゼロでも報告義務が生じる可能性があります。
Q. 年の途中で閉じた日本の銀行口座も報告しますか?
その口座がCalendar Year中に存在し、FBARの$10,000 Aggregate Thresholdを満たした場合は、年末までに閉鎖されていても、その年のFBARで報告対象となる可能性があります。
Q. 親名義の口座でも報告が必要ですか?
単に親名義であるというだけでは判断できません。自分がFinancial Interestを持つか、Signature Authorityを持つかなどを確認します。
Q. Tax Returnを提出すればFBARも自動的に提出されますか?
いいえ。FBARはTax Returnとは別の手続きです。Tax Returnを提出してもFinCEN Form 114は自動提出されません。
まとめ
- FBARはFinCEN Form 114で行う外国金融口座のInformation Reporting
- U.S. personが外国金融口座にFinancial InterestまたはSignature Authorityを持ち、Aggregate Maximum Valueが年間のいずれかの時点で$10,000を超えると原則として提出が必要
- 提出期限は原則4月15日で、10月15日まで自動延長
- Tax Returnとは別にFinCENへ提出する
- FBAR記録は原則5年間保管
- Non-Willful / Willful Penaltyの固定ドル部分は毎年Inflation Adjustmentされる
- Form 8938とは対象資産・Threshold・提出先が異なるため別々に判定する
- Streamlined Domesticの5% Penaltyは未払い税額の5%ではない
- 過年度未提出にはStreamlined ProceduresやDelinquent FBAR Submission Proceduresなど、Facts and Circumstancesに応じた対応方法がある
日本に銀行・証券口座などをお持ちの方は、毎年それぞれの年間Maximum Valueを確認し、外国金融口座全体のAggregate Maximum Valueが$10,000を超えていないか確認しましょう。
※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のTax AdviceまたはLegal Adviceではありません。FBAR、Form 8938、海外資産・海外所得のReportingは具体的なFacts and Circumstancesによって扱いが異なります。最新情報はFinCEN・IRS公式サイトでご確認ください。
参考:FinCEN・IRS公式情報
- FinCEN – Report Foreign Bank and Financial Accounts
- FinCEN – Reporting Maximum Account Value
- IRS – Report of Foreign Bank and Financial Accounts (FBAR)
- IRS – Comparison of Form 8938 and FBAR Requirements
- IRS – Instructions for Form 8938
- IRS – Streamlined Domestic Offshore Procedures
- IRS – Streamlined Domestic Offshore FAQ

