【在米日本人必読】FBARとは? 申告漏れで多額のペナルティも! 日本口座の報告義務を解説

海外資産・国際税務

「日本に銀行口座があるけど、アメリカで報告が必要なの?」「FBARって何?聞いたことがない…」

在米日本人の方からよく聞かれる質問です。FBARはTax Returnとは別の報告制度で、対象となる方が提出を怠るとCivil Penaltyや、重大なケースではCriminal Penaltyの対象となる可能性があります。この記事では、FBARの基本ルールを日本語でわかりやすく解説します。


FBARとは?

FBAR(エフバー)とは、Report of Foreign Bank and Financial Accountsの略称です。

正式な様式はFinCEN Form 114で、外国の金融口座について米国財務省のFinancial Crimes Enforcement Network(FinCEN)へ報告する制度です。

💡 FBARはFederal Income Tax Returnとは別の報告です。

Form 1040などのTax Returnを提出していても、FBARの提出義務がある場合はFinCEN Form 114を別途提出する必要があります。


誰がFBARを提出する必要があるか

原則として、次の2つの条件を両方満たすU.S. personにはFBARの提出義務があります。

  1. 外国にあるFinancial AccountについてFinancial Interest(金融上の利害関係)またはSignature Authority(署名権限等)を持っている
  2. 報告対象となるすべての外国金融口座のaggregate maximum value(年間最高残高の合計)がCalendar Year中のいずれかの時点で$10,000を超えた

U.S. personには、米国市民、米国Resident、米国内で設立・組成された一定のCorporation、Partnership、LLC、Trust、Estateなどが含まれます。

⚠️ $10,000は「1口座ごと」ではありません

外国金融口座すべてのMaximum Valueを合計して判定します。

例えば日本に3つの口座があり、それぞれの年間最高残高が$4,000・$3,000・$4,000であれば、Aggregate Maximum Valueは$11,000となるため、原則としてFBARの提出が必要です。

💡 日本円の口座はどう計算する?

各口座についてCalendar Year中のMaximum Valueをまず現地通貨で確認し、その金額を原則としてその年の最終日のTreasury exchange rateを使って米ドルへ換算します。


対象となる口座の種類

FBARの対象になり得る外国金融口座には、例えば次のようなものがあります。

  • 日本の銀行の普通預金・定期預金など
  • 日本の証券口座
  • Foreign Mutual Fundなどを保有する外国金融口座
  • Cash Valueのある一定の外国Life InsuranceやAnnuity
  • 外国金融口座に対するSignature Authorityがある口座
⚠️ NISA、iDeCo、企業年金などは口座・制度の性質を個別に確認してください。
日本側で非課税や年金扱いであっても、米国側のFBAR・Form 8938・所得税上の扱いが同じとは限りません。

FBARの提出期限

📅 原則:翌年4月15日

4月15日までに提出しなかった場合でも、FBARには原則として10月15日までの自動延長があり、Extension Requestを別途提出する必要はありません。

FBARはCalendar Year(1月1日〜12月31日)単位で判定します。


FBARの提出方法

FBARはFederal Income Tax Returnには添付せず、FinCENのBSA E-Filing Systemを通じて電子提出します。

✅ FinCEN Form 114をオンラインで電子提出

✅ 個人本人が提出する場合、通常は無料

✅ Paper Filingは原則ではなく、特別な承認が必要になる場合があります


口座情報は何年間保管する?

FBAR対象口座については、原則としてFBARのDue Dateから5年間、口座名義、口座番号、金融機関名・所在地、口座の種類、年間Maximum Valueなどの記録を保管します。


FBARを提出しなかった場合のペナルティ

FBAR違反にはCivil Penaltyが課される可能性があり、故意性やReasonable Causeの有無など、具体的なFacts and Circumstancesによって扱いが大きく変わります。

故意でない違反(Non-Willful)

Non-Willful violationには法定のCivil Penalty上限があります。この上限額は毎年Inflation Adjustment(インフレ調整)されるため、古い資料に記載されている「$10,000」を現在の固定額として使うのは正確ではありません。

また、一定のReasonable Causeが認められ、法律上の要件を満たす場合にはPenaltyが適用されないことがあります。

💡 Bittner v. United States(2023)

米国最高裁はNon-Willful FBAR violationについて、必要なFBARを提出しなかった場合の違反は、原則として未報告口座1つごとではなくReport単位で扱うと判断しました。つまり、複数口座を1つのFBARで報告すべきだったケースについて、単純に口座数×Penaltyとする考え方ではありません。

故意による違反(Willful)

Willful violationの場合、Civil Penaltyの法定上限は、原則として次のいずれか大きい金額です。

  • 法令上の固定額(毎年Inflation Adjustmentあり)
  • Violation時点の対象口座残高の50%

Willful violationは非常に重大で、状況によってはCriminal Penaltyの対象になる可能性もあります。

⚠️ FBAR Penaltyは自動的に一定額が課されるというものではありません。Non-WillfulかWillfulか、Reasonable Causeがあるか、何年分の違反かなどによって結論が大きく異なります。過年度の未提出がある場合は、自己判断で遅れて提出する前に専門家へ相談することをお勧めします。

FBARとFATCA(Form 8938)の違い

FBARと混同されやすいのがForm 8938(Statement of Specified Foreign Financial Assets)です。これはFATCAに関連するIRSのInformation Reportingです。

FBAR Form 8938
提出先 FinCEN IRS
提出方法 BSA E-Filing Systemから別途提出 原則としてFederal Income Tax Returnに添付
基本的なThreshold 外国金融口座のAggregate Maximum ValueがCalendar Year中に$10,000超 Filing Status・米国内居住/海外居住によって異なる
対象 主に外国金融口座 Specified Foreign Financial Assets

Form 8938の主なReporting Threshold(個人)

米国内に居住している場合

  • Unmarried / Married Filing Separately:年末$50,000超 または 年中$75,000超
  • Married Filing Jointly:年末$100,000超 または 年中$150,000超

IRSの「海外居住者」の要件を満たす場合

  • Joint Return以外:年末$200,000超 または 年中$300,000超
  • Married Filing Jointly:年末$400,000超 または 年中$600,000超
💡 FBARとForm 8938は別々に判定します。

両方必要になるケースもありますが、FBARだけ必要なケース、Form 8938だけ必要なケースもあります。対象資産とThresholdが異なるため、「どちらかを出せばもう一方は不要」という関係ではありません。


申告漏れに気づいた場合

過去にFBARを提出していなかった場合、状況に応じて複数の対応方法があります。どの方法が適切かは、海外口座からのIncomeを正しくTax Returnに報告していたか、Information Returnにも漏れがあるか、Non-Willfulかどうかなどによって異なります。

Streamlined Filing Compliance Procedures

一定の要件を満たすNon-Willful taxpayer向けに、IRSはStreamlined Filing Compliance Proceduresを設けています。

Streamlined Domestic Offshore Procedures

米国内居住者向けの手続きでは、原則として:

  • 直近3年のCovered Tax Return Periodについて必要なAmended ReturnおよびInformation Returnを提出
  • 直近6年のCovered FBAR Periodについて必要なDelinquent FBARを提出
  • 追加TaxおよびInterestを支払う
  • 対象となるForeign Financial Accounts / Assetsについて計算した5% Miscellaneous Offshore Penaltyを支払う

この5%は「未払い税額の5%」ではありません。対象となる6年間のFBAR期間・3年間のTax Return期間についてPenalty Baseに含まれるForeign Financial Accounts / Assetsを特定し、各年末残高・Valueを集計して、その中のHighest Aggregate Balance / Valueの5%として計算します。

Streamlined Foreign Offshore Procedures

IRSの要件を満たす米国外居住者については、原則として直近3年のTax Returnと直近6年のFBARを適切に提出し、追加TaxとInterestを支払います。適格なケースでは5% Miscellaneous Offshore Penaltyは課されません。

⚠️ Streamlined Proceduresを利用するには、FailureがNon-Willfulであることなど複数の要件があります。また、すでにIRSによるCivil Examinationが開始されている場合など、利用できないケースがあります。過年度のFBAR漏れは、状況を確認してから対応方法を決めることが重要です。

Delinquent FBAR Submission Procedures

Tax Return上で外国口座からのIncomeをすべて適切に報告し、Taxも納付済みで、FBARだけを提出していなかった場合などには、Streamlined Proceduresとは別のDelinquent FBAR Submission Proceduresが適用できる可能性があります。具体的な要件を確認したうえで判断します。


よくある質問

Q. 日本に帰省した時だけ使う口座でも報告対象ですか?

口座の使用目的だけでFBAR対象外になるわけではありません。外国金融口座のAggregate Maximum Valueが年間のいずれかの時点で$10,000を超えたかどうかなど、通常のFBARルールで判定します。

Q. 年末残高がゼロならFBARは不要ですか?

必ずしもそうではありません。FBARは年末残高だけではなくCalendar Year中のMaximum Valueを基準に判定します。年の途中で残高があり、その年中の外国金融口座のAggregate Maximum Valueが$10,000を超えた場合、年末残高がゼロでも報告義務が生じる可能性があります。

Q. 年の途中で閉じた日本の銀行口座も報告しますか?

その口座がCalendar Year中に存在し、FBARの$10,000 Aggregate Thresholdを満たした場合は、年末までに閉鎖されていても、その年のFBARで報告対象となる可能性があります。

Q. 親名義の口座でも報告が必要ですか?

単に親名義であるというだけでは判断できません。自分がFinancial Interestを持つか、Signature Authorityを持つかなどを確認します。

Q. Tax Returnを提出すればFBARも自動的に提出されますか?

いいえ。FBARはTax Returnとは別の手続きです。Tax Returnを提出してもFinCEN Form 114は自動提出されません。


まとめ

  • FBARはFinCEN Form 114で行う外国金融口座のInformation Reporting
  • U.S. personが外国金融口座にFinancial InterestまたはSignature Authorityを持ち、Aggregate Maximum Valueが年間のいずれかの時点で$10,000を超えると原則として提出が必要
  • 提出期限は原則4月15日で、10月15日まで自動延長
  • Tax Returnとは別にFinCENへ提出する
  • FBAR記録は原則5年間保管
  • Non-Willful / Willful Penaltyの固定ドル部分は毎年Inflation Adjustmentされる
  • Form 8938とは対象資産・Threshold・提出先が異なるため別々に判定する
  • Streamlined Domesticの5% Penaltyは未払い税額の5%ではない
  • 過年度未提出にはStreamlined ProceduresやDelinquent FBAR Submission Proceduresなど、Facts and Circumstancesに応じた対応方法がある

日本に銀行・証券口座などをお持ちの方は、毎年それぞれの年間Maximum Valueを確認し、外国金融口座全体のAggregate Maximum Valueが$10,000を超えていないか確認しましょう。

※本記事は一般的な情報提供を目的としており、個別のTax AdviceまたはLegal Adviceではありません。FBAR、Form 8938、海外資産・海外所得のReportingは具体的なFacts and Circumstancesによって扱いが異なります。最新情報はFinCEN・IRS公式サイトでご確認ください。


参考:FinCEN・IRS公式情報

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